苧麻ちょま・からむし 《 Ramie / China Grass 》

苧麻

〔 いらくさ科 〕
学名:Boehmeria nivea
産地:日本・中国・韓国
使用部分:靭皮
績み方:撚り繋ぎ

日本名の「からむし」は「茎蒸」で、図鑑等では
"茎(カラ)を蒸して繊維を採ることからついた"となっています。
しかし、実際には、繊維を生のまま採るので茎を蒸すことはありません。
"韓(カラ)から来たモシ"が訛って「からむし」になったという説の方が、実際に即しているように思います。
青土の糸や布のほとんどは、中国各地の苧麻で作っています。

苧麻

青苧 ( あおそ ) : 苧麻の茎から採り出した繊維

苧麻

苧桶に入った績まれたばかりの苧麻糸

苧麻

巻とられた苧麻糸。糸を引き出す時は、必ず中の績み始めのところから

苧麻

青土上布

大麻たいま 《 Hemp 》

大麻

〔 あさ科 〕
学名:Cannabis sativa
産地:中国/山東省
使用部分:靭皮
績み方:撚り繋ぎ

一口に大麻と言っても、実に様々。これは専ら繊維用の大麻です。
大麻は、人類が繊維を採るために栽培した最初の植物の一つなのです。
大麻は1年草、約 120 日で3m 程に成長します。
日本では、春のお彼岸の頃に種を播き、土用に採り入れ、秋のお彼岸には苧引きします。自然のサイクルに適った栽培方法です。

大麻

麻苧(あさお)・精麻/大麻の茎から採り出した繊維

大麻

大麻糸

大麻

大麻布

緑の大麻たいま 《 Green Hemp 》

緑の大麻

〔 あさ科 〕
学名:Cannabis sativa
産地:中国
使用部分:靭皮
績み方:撚り繋ぎ

モン族の人たちが、民族衣装に使う大麻です。
外皮を付けたまま績むので、糸が緑色のままです。
この後、灰汁炊きをしてから機にかけます。
緑色は比較的長く残りますが、経年変化は免れません。

緑の大麻

大麻の茎から採り出した繊維。外皮が付いています

緑の大麻

緑の大麻糸と布

ピーニャ 《 Piña 》

ピーニャ

〔 ぱいなっぷる科 〕
学名:Annas comosus
産地:フィリピン
使用部分:葉
績み方:機結び

「レッドスパニッシュ」という糸用のパイナップルの葉から採れる繊維。
美しい光沢があり、麻の仲間の中で、最も細い繊維です。
葉の外側のやや粗い繊維と内側の細く柔らかい繊維があります。
内側の繊維は、経糸に使います。

ピーニャ

葉から繊維を採り出す。外側の繊維は、割れた磁器の皿を使って剥ぎ、内側の繊維には、当たりの柔らかいココナッツの殻を使う

ピーニャ
ピーニャ

採り出した繊維

ピーニャ

苧績み(knotting)
/繊維の根元と根元、先と先を交互に機結びで繋いでいく

ピーニャ

整経/経糸の準備

ピーニャ

高機で織る

ピーニャ

織りあがったピーニャの布

芭蕉ばしょう 《 Basho 》

芭蕉

〔 ばしょう科 〕
学名:Musa balbisiana ( リュウキュウイトバショウ )
産地:日本/沖縄
使用部分:葉鞘(茎のように見える部分は偽茎)
績み方:機結び

芭蕉には、糸用の糸芭蕉と食用の実芭蕉、観賞用の花芭蕉があります。
この糸は、糸芭蕉の葉鞘の芯に近い部分の繊維を使った着尺用の糸です。

芭蕉

芭蕉の葉鞘を剥いだところ

芭蕉の繊維

芭蕉
芭蕉

苧績み/機結びで繋ぎ、余分な部分はカミソリの刃でカットする

芭蕉

芭蕉の糸と布

はす 《 Lotus 》

蓮

〔 すいれん科 〕
学名:Nelumbo nucifera
産地:ミャンマー/インレー湖
使用部分:葉柄
績み方:撚り

績み方が、他の繊維の「撚り繋ぎ」とは少し異なります。
何本かの葉柄から無数の繊維を引出し、まとめるように撚りをかけながら、 1 本にして繋いでいきます。

蓮

蓮の葉柄から繊維を引き出すところ

蓮

蓮の糸と布

型染めの帯

型染めの帯 / 津田千枝子作 撮影 / 蛭子真

くず 《 Kudzu 》

葛

〔 まめ科 〕
学名:Pueraria montana var. lobata
産地:ラオス
使用部分:靭皮
績み方:撚り繋ぎ

経糸にも使える丈夫な糸です。
現地では、ケバもないので、糊を付けずに原始機で織っています。
しなやかで光沢もある、美しい糸です。

葛

葛の繊維

葛

苧績み/脛を使って撚りをかけながら、葛の繊維を績んでいるところ

[動画]葛の苧績み

[動画]原始機で織っているところ

葛

原始機で織る

葛

葛の糸と布

しな 《 Linden 》

榀

〔 しなの木科 〕
学名:Tilia japonica
産地:ラオス
使用部分:靭皮(雌株が茶、雄株は白)
績み方:撚り繋ぎ

日本の榀の繊維は、灰汁炊きで得られる茶色が特色ですが、
このラオスの榀は、繊維の状態ですでに茶色。
植物の世界は、ほんとうに様々で興味が尽きません。

榀

鉈を使って繊維を剥がしていくところ

榀

採り出した繊維

榀

榀の糸と布

こうぞ 《 Paper Mulberry 》

大麻

〔 くわ科 〕
学名:Broussonetia Kazinoki
産地:中国/山東省
使用部分:靭皮
績み方:撚り繋ぎ

今では、すっかり紙漉きの原材料と思われている楮は、
古代においては、布(木綿=ゆう)を織る素材でした。
徳島県の「木頭の太布」は、それを現代に伝えています。
藤に大変良く似た繊維です。

大麻

楮の繊維

大麻

苧績み/楮の繊維を細く割いて撚り繋ぎしていく

大麻

楮の糸